あきべえの、
いぎりす大学院留学にっき!
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飲酒運転で裁判沙汰に!(番外編)

今回は番外編ということで、僕が書いたものではありません。一種の教 訓として書かれたお話を、本人の許可を取ってご紹介します。

---(以下引用)---

帰国を1週間前にして、まったく面目なく、情けなく、愚かな、とほほ 事件の顛末記です。もって他山の石としていただければ、まだ浮かばれ ます。

先週金曜日にこちらの大学友人関係で最後のお別れパーティーをしてく れたのですが、そこで結構飲み、まっいいかと思って12時過ぎに家族・ 友人を乗せ運転して帰り、途中でネズミ取りに捕まって停車を命じられ、 さらにぷんぷん漂うアルコールの検査を受けさせられ、基準値をゆうに 超えて逮捕されました。

つかまったのは林の中を抜けていくような整備された道なのに、住宅地 にあるために30、40マイル制限となっています。愚かな自分も含め、誰 もが50、ところどころ60マイルまで出す所で、以前から制限が厳しすぎ る場所だと思っていました。今度の件では、30マイル制限を13マイルオ ーバー。

最初は「なんでえ?ついて行けばいいんだろ、ついて行けば、家族もい るんだからさあ、警察には保育所はあるわけ?」なんてことを思ったり、 言ったり(毒づくに近い)していたのですが、1人引き離されてパトカ ーの後部座席に座らせられ(わたし以外に運転できるものがいなかった ので、車は現場でそのまま駐車し、家族・友人は別のパトカーに乗車)、 発車する前に妻と話しがしたいといったところ、言下に

「No. You are under arrest!(おまえは逮捕されたんだ!)」

と言われ、ずがががががあーん。やばい、これは結構深刻な状況になっ ていると、俄然自覚したのでした。

警察で再度検査した結果も全然駄目で、血液検査や尿検査のオプション があったり、solicitor(弁護士)を呼ぶか聞かれたりしましたが、で きるだけこじらせたくない一心で全部スキップ。起訴されること、それ からアルコールの基準値を下回るまでdetain(留置)されることが決定 しました。金曜の夜に網をはっていたということのようで、検挙者一覧 ボードには10人も20人もの名前(真ん中にひときわ大きな字で燦然と輝 くわたしの名前)。留置所の奥の方からは、ぐげぐわどぅぐわえー、と いった獣の雄叫びのような声。おいおいおい、共同房だったらどうしよ う、ああもう悲しいなあ、これは。

ただしこれは杞憂で、独房に入れられました。むき出しのコンクリート でできた4畳半くらいの大きさの部屋、そこに隣接して、出入りのドア がなく、ふたも便座もないステンレス製の便器がおいてあるトイレ。部 屋の奥の壁にはごく低い、木の板を敷いた雛壇のようなものがあり、そ こに最初は座っていたのですが、そのうちうとうと2時間くらいまどろ みました(あとで嫁はんに、こっちが寝ずに心配していたのになによ、 どうせいびきでもかいていたんでしょうと叱責されました。出される時、 Have you slept well?とか聞かれたから、ほんとにいびきをかいてい たかもしれない)。

独房に入れられるまで、家族・友人は待機していたのですが(そのあと 自宅までパトカーで送り届けられた)、子供は環境が悪いからというこ とで(そりゃそうだ)警察署内には入れさせず、パトカーのなかで待機 ということになりました。ところが、パトカーの特に運転席にはいろい ろな機具があるもんだから、子供は夢中になって遊び、ボタンをやたら 押すわ、無線で話しをするわ、しまいにはサイレンを鳴らしてしまい、 警官があわてて飛び出してきたそうです。わたしを逮捕した警官2人組 は、長いこと子供と楽しく遊んでいてくれたそうで、ううん、このあた りがイギリス風というのか、なんだか分かりません。

独房から出たあと、再度検査を受け、基準値以下になっていたので違反 の現場まで送り届けられ、そこから車を運転して明け方4時頃帰宅しま した。裁判は月曜日の2時15分からと決定。まてよ、この日は引越屋さ んが来るから駄目じゃないかと思い直して、事件翌日の土曜日に再び警 察まで行き、かけ合ったのですが、門前払い。ひつこく迫ったら、むこ うも怖い顔をして、出廷しなかった場合は自宅で逮捕されると、ひつこ く脅してくれました。ま、引越では、理由としてあまり強くないことは 認めますけれど。

で一昨日月曜日に、裁判所に一応身なりを整えて出廷しました。ボード を見て法廷の番号をまず確認することになっているのですが、わたしの 名前が見当たらず、これはどうしたことかと思ったら、ただの英国流の ミスでした。こちらに争う気持ちがあれば小さくないミスですね。

当の第3法廷の前で開廷を待っていたのですが、野太い腕に入れ墨した おっさんや、昼から酒臭いあんちゃんや、どの方面の御商売かなあと思 ってしまうおねえちゃんやで、すでにとほほな気分。開廷すると名前を 順番に呼びだしてなかに入るのですが、わたしは1番最初でした。判決 の難易度が関係して簡単な順から呼ぶのかもしれません。友人からは、 Queue(列)のようなもんだ、数秒で終わると事前に聞いていたので、 税務の窓口相談のような情景を予想していたのですが、そんなことはあ りませんでした。いくつも座席のある立派な法廷で、裁判官から書記ま で含めて、被告のわたし以外に列席者が10人くらい。最初に裁判官側の 進行役のような人から本人の身元確認、滞在関係の質問を受け、つぎに 警察側のsolicitorから起訴状が読み上げられ、そのあと再び進行役か らいくつか質問を受けました。こんな感じです。

「罪状を認めますか。」
『はいはい、そりゃもう、わたし有罪ですから。』
「なにか申し立てるべきことはありますか。」
『自分では酔っぱらっていると思わなかったのですけど、実際には酔っ ぱらっていました。で、これは全然言い訳じゃないんです、言い訳じゃ ないんですけど、学部の友人がわたしたち家族のために最後のお別れパ ーティーを開いてくれて、そこから帰宅する途中だったんです。そうで す、全然言い訳じゃないんです。わたしが悪かったんです。わたし有罪 ですから。』
「あなたのためのパーティーだったのですね。いつ帰るのですか。」
『来週の月曜日です』
「収入はどこから得ているのですか。」
『日本の大学からで、こちらの大学からはびた一文もらっていません。』 ・・・・・
「最後になにか申し立てることはありますか。」
『なにもありません。わたしが有罪であるということ以外に何も言うこ とはないのです。』

そのあと進行役の人と、もう一段高いところにいる3人の裁判官とがそ の場で相談を始め、待つこと3分くらいだったでしょうか、判決が決ま り、主席裁判官が朗読するのを立ち上がって聞きました。その内容は、
1)12ヶ月間の conditional discharge
2)12ヶ月間の免停(罰金はなし)
というものです。

1)の方は聞いたその場で理解できず(今でも十分理解できたわけでは ありません)、dischargeの言葉を聞いた瞬間は、国外退去を命じられ たのか、もう2度と入国できないのか、ずがががががあーんとなり、何 度もとんちんかんな質問をした挙げく、まあそんなとんでもないことで はなさそうだと理解して、判決を文書にしてもらうことを最後にお願い しながら退廷しました。この間、全部で15〜20分くらいだったでしょう か。

しかし文書にしてもらっても分からないものは分からないわけで、裁判 所の職員とおぼしき人にしつこく食い下がって内容を聞きました。この 辺がまた面白いところなのですが、わたしが声をかけた女性職員は、勤 務中で誰か人を待たせているのに(あとで分かったこと)、他の職員に も質問したりしながら、わたしに対してそれは丁寧に教えてくれました。 つづめていうと、12ヶ月の期間中にどのような犯罪であれ再犯をおかし た場合にはより深刻に受け止められることになる仮釈放、といったこと のようです。少しでも不安が残るといやなので「つぎに裁判所のやっか いになることがあったら」と何度も聞き続けたのですが、再犯の意図が あるのかと少し怪訝そうな顔もされました。

この質問で一応大体のことは理解し、裁判所を出て、そのあと拘束され た警察署を訪ね、あちこちをもう一度目に焼き付けてから (May I help you?と2度も聞かれた)帰宅しました。

そんなわけで、最後に得難い体験をしたといいましょうか、素晴らしく みそをつけたといいましょうか、わたしの英国滞在もそろそろ終わりを 迎えようとしています。最後まで長文のお目汚しに付き合って下さった 皆さん、ありがとうございました。是非是非、この事件を反面教師にし て、この国での飲酒運転に関し、ゆめゆめ甘く考えないようにお願いし ます。

(匿名希望)

◆人名・地名の紹介◆
あきべえ:在英8年。ダーラム大学院生。クリスチャン。
めーさん:在英1年。ハウス・マネージャー(平たく言えば専業主婦)
恵花(あやか):17ヶ月。ヨーグルト・モンスター。
ダーラム:イギリス北部の小さな大学街。世界遺産の大聖堂あり。

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